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みんながんばってる

数日前、ずっと昔の患者さんが訪ねてきてくれました。彼女はアトピー性皮膚炎で長い間苦労した人で、私が開業前に勤めていた病院で知り合ったのですが、その後、私はその病院を辞め、彼女も熊本に転勤になり、長い間会っていませんでした。
彼女はあるときフェリシモという大手の通販会社にメールをしました。アトピーの人は着るものに苦労している、折り目やタグがかゆくて裏返して着なければならないし、ぴったりしたものが着られないので、どうしても、だぶだぶしたものになってお洒落なんかできない、着心地がよくしかもおしゃれな服を作ってくれませんか、と。

彼女はまさか本当に自分の意見を採用して、そんな服を作ろうと考えてもらえるとは夢にも思っていませんでした。ただ、普段からフェリシモのカタログが好きでよく見ていたし、時には買っていた大好きな会社だったから、ご意見ご感想のあて先に思いつきのメールを送っただけだったのです。
しかし、フェリシモの対応は予想を裏切るものでした。作りましょう!あなたが作ったらいいじゃないですか、と、数人のスタッフの方が熊本までやってきて、そうして開発が始まりました。
やがて、アトピーの仲間も集まり、みんなで試行錯誤の結果、商品が生まれました。サリエという新しいブランドはこうして誕生しました。
サリエが誕生したとき、彼女はすぐに私にメールをくれて、ぜひ他のアトピーの患者さんにも紹介をしてあげてほしい、みんな困ってるはずだから、とカタログも送ってきてくれました。それ以来、トキコクリニックにもそのカタログがおいてあるのですが、どんどん商品が洗練されてきていて、ほんとにおしゃれで着心地のよいものにできあがってるなあと、いつも感心して見ています。おしゃれな下着まであるんですよ!
その彼女が、大阪に戻ってきたので、と、新しいトキコクリニックに訪ねてきてくれたというわけなのでした。

彼女の行動力、信じる力、前向きな姿勢には本当に敬服します。今はほとんど湿疹はないのですが、昔はかなり重症でした。ここまで治る、ということもみんなに知って欲しいし、こんなに明るく生き生きとがんばってる人がいることも知ってほしい。そのためには私のつたない言葉ではとても伝えきれません。
それよりは彼女がくれた手紙をみなさんに読んでもらうのが一番だと思います。私をほめてくれてるところもあって、そのままお見せするのは気恥ずかしいのですが、抜粋では伝わりにくいと考え、全文をご紹介します。

     
  「昨日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました。クリニックのきれいさ、心地よさに感激し、それ以上に先生の変わらぬ若さとパワーに驚き、その全身からわきあがってくるオーラのようなものはいったい何なのかと・・・。

私が淀キリ(注 淀川キリスト教病院)で診ていただいていたのはもう10年近くも前のこと。肌も体も心もボロボロだったあの状態からここまで来るには長い時間がかかり、いろいろな事がありましたが、その経験は決して無駄ではなかったと思っています。というより無駄にしたくないからこういうことを始めたのかもしれませんね。
野田さん(注 クリニックに一緒に来てくれたお友達で、やはりアトピーの方)をはじめ、モニターを引き受けてくれている友人達も、サリエに関わることで生活に張りができて楽しくなったと言ってくれます。私にはそれがなにより嬉しいことです。これからもアトピーの人たちが少しでも明るい気持ちになれるよう、また症状がひどい時にそれをサポートできる服を作っていけるよう、考えていきたいと思っています。
最後になりましたが、いつもご理解いただき、カタログを置いてくださいまして、ありがとうございます。最新カタログ、80部を送らせていただきます。

 庄司真弓」

 
     


彼女はもちろんフェリシモの社員ではなく、あくまでこの仕事はボランティアです。だからこれは趣味ですとも言ってましたが、私はこれはやはり仕事だと思います。とてもとても大事な仕事だと思います。だから、ずっと私は応援していきたいし、彼女を励みに私もがんばろうとも思っています。

ずっとみなさんにご紹介したいと思っていた、もう一人のアトピーの患者さんのこともお話させてください。彼女は今は本当によくなっていますが、初めは本当につらい思いをされました。でも、私は絶対よくなると信じていたし、彼女も治りたい、絶対治るんだ、という信念が強かったのでしょう、数ヶ月で日常生活に差し支えないところまで良くなりました。
ステロイドでコントロールすることが悪いことだとは思わないけど、それは治っている状態ではないし、治る方向へ向かってさえいない、いわばその場しのぎの究極の対症療法です。しかも、害がないならまだしも、副作用の問題はいつもついてまわります。やはり患者さんには治ってもらいたいわけだから、私はいつもステロイドなしで暮らせるところまでがんばりませんか?と、お話するわけです。でも、ステロイドを止めると、一度はとても悪くなるし、それが永遠に続く気がしてくじけてしまう方がたくさんいます。彼女はそういう人たちに自分の体験が役に立つなら、と、手記を書いてくれました。それをご紹介して、今回のトキコメモを終わりたいと思います。

     
 

 子供の頃からアトピーで何気なくお医者様に言われるままにステロイド薬を使っていました。症状も指や腕の関節膝の裏等に多少出ていたくらいで日常生活に支障か出てるわけでもなく、だからか自分の事なのにアトピーやステロイド薬についてほとんど無知であった気がします。
そんな生活が26年、ちょっとずつとはいえ薬を使い続けていました。
でも少ない知識の中ステロイドが体に決して良いわけではないことは知っていたので、いつか止めよう、止めようと思っていたのは確かでした。

 26歳の頃仕事やプライベートのストレスからかアトピーが少し酷くなりました。でも通っていた病院に行っても一時的に強い薬を処方するだけでした。その薬も一時は効くけれどだんだんと効きが悪くなるといった具合でした。そして少しずつ不安になってきたのでステロイドを止めたいと医者に言ってみたものの、ほとんど取り合ってくれませんでした。私の様に一見症状の軽かったアトピーは薬をだんだん減らしていけば必ず良くなる、ステロイドなしで治すのは無理と言われ続け、それ以上何かを言うととても嫌な顔をされました。何件か病院を変えたけれども、どこでも一緒の事を言われて、自分自身もやはり薬なしでは治せないのかなぁと半分諦めていました。

 そんな時にトキコクリニックを紹介され、小村先生に出会いました。先生は今までの先生とは違い、ステロイドを使いたくないという私の意志を尊重して下さり、その意思を酌んで薬を使わない治療法を一緒に考えてくださいました。カウンセリング中心の治療もあって気楽だったからか、ある日「薬止〜めた!」という風に気軽に使うのを止めたんです。
多少の知識から、使い続けた薬を止めたらどうなるかは分かっていたつもりだったけれど、
世に言う「リバウンド」がここまでツライとは私自身も思っていませんでした。
ある朝起きたら顔がパンパンに腫れ目が開かなくなって。そこからはあまりにも辛くて詳しくは思い出せませんが…

 とりあえず終始気が狂いそうな位体の奥底から体中が痒く、体中の皮膚はガサガサボロボロで体中が赤黒く変色し、関節は象の皮の様に硬くごわごわになりました。
痒くて掻けば皮膚は破れ臭い汁がだらだら流れ出て、乾くと肌はボロボロ落ち、部屋中皮膚だらけ。それこそ山が出来るくらいに。お風呂に入っている時が一番安堵出来る時だったけど出る時は悲惨でひりひり痛くてたまらなく、出て1時間はじっとしてないと動けなかった。湯船の中ははがれた皮膚でにごり何回もお湯を代えました。
 脚はパンパンに浮腫んでいるのでうまく歩けず靴もはけず、まっすぐ立つこともできなかったので始終前かがみで。体中があかぎれ状態で腕をちょっと上げても痛みが走って。生理は止まり体毛は抜け、朝起きたら吐く・・・
 体中のエネルギーがアトピーに使われていたからか食べても食べても体重は減り、朝起きたら布団がびしょびしょになるくらいの汗を夜中に掻き、夜は寝れないから常に寝不足で耳鳴りが止まなく…
 毎日毎日辛くて泣いてばかりいた気がします。もう治らないんじゃないか、このまま汚い姿のまま生きていくのかなぁって悲観ばかりしていました。薬を止めた事を後悔したこともありました。なんで自分からこんなツライ思いしてるんだろうって思った。この症状の酷さは家族や友達も驚き、見ている方も辛かったと思う。でもだからって薬を使う気にはなれなかった。せっかくここまで止めたのに今薬を使ってしまったらまた振り出しに戻って、その繰り返しが永遠に終わらない気がしたから。それよりかは、ここまできたら絶対薬なしで治してやる!って意地になっていた気もする。

 よく考えたらこれだけリバウンドが出るって事はそれだけ自分の体が薬に頼って生きてきていたってことの表れだったってことだと思う。それだけ薬に依存していた体を正常に戻すにはそれなりに努力が必要でした。くじけそうになった時、よく先生に「自分の体を信じてあげなさい!かならず山は超えてよくなるから!そのままの状態の人なんていないから!」って励まされました。そしてそれは本当でした。その言葉を信じてよかった。そして自分の体を信じてよかったと思います。本当に頑張ったら自分の体は薬に頼らなくても自分で回復するんです。一番大事なのは何より自分の体を信じることだったんです。

 先生と一緒になっていろいろな治療に挑戦しました。漢方・針・マッサージ・プラセンタ注射。先生は良いかもということは何でも提案してくださり後押ししてくださいました
その他、自分でも出来る限りの事をやりました。自分の肌に合った温泉を見つけ通い、血の流れを良くするため毎晩1〜2時間の入浴をし、食は和食中心として良質の植物性たんぱく質を多く摂る様にし、刺激物、添加物はなるべく避け、粗食を心がけました。

 その甲斐あってかリバウンドが始まってから4ヶ月した頃から少しずつ綺麗な皮膚が出来てきだしました。その綺麗な皮膚を見つけた時はすごく嬉しかった。そこからは自分の目でも分かるくらいにだんだんと回復してきました。多少掻いてもそんなに崩れない強い皮膚となり夜も痒くて寝れないという度合いが和らいでいきました。毎日毎日剥がれ落ちていた肌の代謝の割合も少しずつ落ち着いて来て、そんなに肌がめくれ落ちることもなくなってきました。

 そして今はまだ完治とはいえないけど、体の大部分は健康に近い肌で、関節や首等まだ多少症状は残っているけど日常生活はほぼ人並みの生活が送れるようになりました。

  そうなった今、このアトピー治療は一人だったら到底乗り越えられなかっただろうって思います。毎日一緒にいる家族には一番迷惑や心配をかけました。辛くて八つ当たりしたりわがままを言ったりしたのも1度や2度じゃなかったと思う。でも家族は私の体の事を一緒に考え勉強してくれて、理解して気持ちも分かってくれ受け止めてくれました。

そしてクリニックの先生やスタッフのみなさんにもとてもお世話になりました。

  他の病院の様に事務的ではなく本当に親身になってくださって、通うのが全く苦ではありませんでした。周りの友達も、変わり果てた私の容姿を見て一生懸命励ましてくれたり、アトピーに良いという噂を聞けばどんな些細なことでも気にしてくれて私に伝えてくれたりしました。
そんな周りの協力や応援があってこそ私は山を乗り越えられたと思っています。
 乗り越えるのには本当に相当の忍耐力と我慢、そして周りの助けが必要になると思います。そして何より自分自身を信じる力、これからの、治った自分を想像することが必要じゃないかと思います。

  必ずちょっとずつでも良くなっていくってことは真実なんで、これから治療にあたる方々にはそれを信じて頑張って欲しいと思います。

 
     


ではまた次回・・・。

 
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