Aug

12

一度きりの夏の景色

はぴトレについて|August 12,2010 4:36 PM

嵐の過ぎた青空に、野球場のスタンドのような入道雲が沸き立っています。
響くセミの鳴き声は、こだまする観衆の声援のよう。
憧れだった甲子園の「お兄さん」は、いつのまにか年下のカワイイ「王子」に。
その数だけ夏を重ねてきたけれど、振り返ればどれもそれぞれに思い出深いものばかり…なんて思っていたら、気が付けば二人の娘がその高校球児世代に。
まったく、時の流れはなんとやら…です。

彼女たちもそれぞれの夏を経て、成長と共に夏の過ごし方も変わってきました。
中学2年生の娘は、2週間の長旅で夏を満喫しています。
離れていてもセイシュンの青い香りがここまで漂ってきそうです(笑)。
一方、高校生の娘は受験勉強の夏。
毎日クリニックへ私と一緒に出勤し、ひたすら机に向かっています。
医学部を目指しているようなので、なかなか勉強も大変なご様子。
見守ることしかできない私は「せめて気分転換に温泉でも行かない?」と誘ってみたのですが、「勉強したいから…」と断られてしまいました。
幼い頃は家族で計画を立て、海やプールに出かけた休日もあったはずなのに、夏の風景は時の流れと共に、家族の形まで変えてゆくものなのでしょうか。
なんだか少し寂しく感じた母は、せめて家族で半日!とおでかけを企画。
この夏、唯一の「夏遊び」に、京都・貴船の川床へ食事に行くことにしました。

涼しい川のせせらぎの中、木漏れ日と清流の音を聞きながら、皆でお鍋をいただく予定。
都会の喧騒を離れ、受験勉強や日頃の悩み、それぞれに抱えたあれこれを川の水に流して、心を空っぽにリラックスできれば、それが今年の夏の風景になればいいなあと思っています。

夏という季節は、その日射しが肌に日焼け跡を残すように、印象に残る風景を心に焼きつける不思議な季節です。
ジリジリと焼けつくプールサイドで、水底に光る波紋をじっと見つめていた小学生の登校日。
夕暮れに友人と生温かいアスファルトに座り込み、互いの秘密を広げた10代の帰り道。
そして、私にとって一番印象に残っている夏の風景は、大学6回生の明石の林崎海岸での1コマです。
学生最後の夏。もう二度と来ない夏。
ちゃんと卒業できて、国家試験に合格できれば、そこからはなんと本当に医者になるのだと思うと、もう遊んで過ごす夏がくることはないと思いました。

国家試験に合格したら(成績が悪く、合格できるかどうかはわからなかったけど、一応合格を前提として)、その日からはもう一人の職業人の医師として、別人のようにがんばろう、それができなければ社会人として、いや人間として意味がない、もう遊んでなんかいられない。
だから、これが最後の遊ぶ夏。この夏が、最後。

ぎらぎら照りつける真夏の太陽を背に、ジェットスキーのエンジン音を鳴り響かせながら、真っ黒に日焼けした24歳の私がこれから突き進む医師としての道への熱い思いを、海を前に誓ったあの風景。(というか、医者になれなかったらどうしよう・・・との不安を、海にはねかえしていたあの風景!?)
あの日のあの熱い思いは、今も変わらぬまま。
そして、夏が来るたびに、心に焼きついたあの海の風景はよみがえり、私に初心を思い出させてくれるのです。

夏の過ごし方は、時の流れと共に姿を変えてゆくもの。
だから、同じ夏は二度と来ない。
でも、たったひとつの夏だからこそ、心に焼き付けられた風景はふとした場面でよみがえり、何かを思い起こさせてくれるのかもしれません。
ふと笑えたり、ちょっと泣けたり、思わぬ勇気が湧いてきたり。
いつかきっと未来の私の力になる、一度きりの夏の風景。
このせつなさが、夏の持つ不思議な力なのかもしれません。

今年もたった一度の夏。
どんな景色が、あなたの心に焼き付くのでしょうか。


そうそう!、数日前に我が家に新入りがやってきました。
名前は“イヴ”。
yves.jpg
どーんと大きな姐さんネコの“ココ”に何度「っふーッ!」と威嚇されても、懲りずにすり寄る明るい性格です。
私も毎日、躾にお世話に奮闘中!
家中を転がり回る、ほんのゴムまりくらいのちっちゃな子猫のイヴに、家族みんなが振り回され転がされています。
ようやく子供の手が離れたと思ったら…おっと!それはそれで寂しかったはず。
でも、こんなふうに小さく歴史は繰り返されてゆくものなのかも知れません。
そのうち、私に手がかかるなんて言われて…!?

たった一度の夏です。
どの夏も、今までで一番の夏になりますように。
キラキラ輝いた夏が焼き付けた景色は、いつかイキイキと生きるあなたの輝きになることでしょう。

すてきな夏をお過ごし下さい。

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コメント

Posted by キョロちゃん | at August 20, 2010 3:10 AM

トキコ先生へ
素敵なブログ、いつも拝見させていただいています。言葉をえらんで書かれている先生の文章の奥にある人柄を感じます。今日は先生の今回のブログとは、余り関係ない話を書いてしまいますが、お許しください。私は二年間にとても人間として、とても誠実で信頼できる精神科医のお医者さんと出会いました。その方が、最近医者をやめるということで「診察室にあるものなんでももっていっていいですよ」といってくださって「じゃあ、なにかオススメの本をください。」とお願いすると、「悩む力~べてるの家の人びと」という本をくださいました。内容はなかなかヘビーなものでしたが、希望がわいてくる本でした。私は教師をしています。生徒には私ができることを一生懸命してあげたい、という志はいまでも変わりません。不遜な言い方で誤解を招くかもしれませんが、教師と医師って何となくにてるところがあるなあと思うようになりました。今、自分ができることを精一杯がんばるしかないですね。私は真面目すぎてパンクしてしまうのですが、引きこもりの問題、老人介護の問題の現実、薬物の問題、各家庭の悩みを聞く立場にあるものとしては、なんと自分の非力なことか。。。。家庭力が低下しているという人もいますが、いちがいには言えません。学力を付けてあげなければならない一方で、精神面もサポートがいる時代です。できるだけホッとさせてあげたいのですが、現実は厳しいです。いつも、美容と関係ないことばかりかいて、すみません;。9月からまた先生のクリニックに通わせていただきます。肌荒れしてますから(笑)。

Posted by tokiko | at August 20, 2010 6:54 PM

キョロちゃんさん

いつもはぴトレ、読んでくださってありがとう。

その精神科の先生は、どうして医者を辞めてしまわれるのでしょうか。
もしや、しんどくなってしまわれたのでしょうか!?

キョロちゃんさんのおっしゃるとおり、学校の先生や医者って
自分の事と仕事のバランスをとるのがすごく難しいと思います。

私は、誰かの力になれたときは嬉しいし、
力及ばずでお役にたてなかったときは、
私ではない誰かが、きっと何とかしてくれている、
そう思って、自分を責めないようにしていますよ。

目の前の、できることを、ひとつひとつやる。
人間の力を信じて。

キョロちゃんさんの力も、私は信じていますよ。

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